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執筆者の写真Bun(ブン)

軽音楽部に入らなかったのは、先輩や同級生から下手さを笑われるんじゃないかという恐怖心があったから


香川大学での入学式のあと、そこかしこでサークルや部への勧誘大会が勃発していた。


波のようにやってくるチラシをフル無視して、軽音楽部のドアを開けた。


凄い技術を持った先輩、好きなバンドの話で盛り上がる同級生。


部屋の中がキラキラしてた。


で、誰にも気づかれないようにバックレた。


少~しカジった程度の下手くそな人間に居場所があるように思えなかった。



とりわけ十代の頃というのは、楽器の演奏に対する価値観が「上手いかどうか」に偏ってた気がする。


ライトハンドのような難しい技術をキメれる人がヒーローだったし、どんなバンドについてでも話を合わせられる博識な人が会話の中心だった。


一方で入学当初の僕はというとBOØWYとXとくらいしかまともにコピーした事ないし、ライブ観戦もジュディマリと黒夢くらい。


かと言ってビデオを買ったりレッスンに通うためのお小遣いがあるわけでもない。おまけに所持品は2万円で買った通販ベース。


そんな人間にとって、あのキラキラした軽音楽部で「居場所」があるとは思えなかった。


どうせ「こんなんも弾けねぇのかよ」とか「通販なの?ダッセーな」とか言われるに決まってる。


で、普段どうでもいい扱いしておきながら「ところでライブ来てよ」とか言われるに決まってる。


楽しくなりたくてやって来た場所でみじめになるなんてマッピラ御免。


じゃなきゃ、さして興味もなかったテニスサークルなんて入るワケが無い。


テニスサークルへ入ったのは、ど初心者も歓迎だったから。試し打ちで「誉め殺し」してくれたから。


別にさ、どこでも良かったんだ。受け入れてくれる場所だったら。楽器の練習なんて自宅でいくらでも出来るし。


やっぱ友達が欲しかったんだ。



今になって思えば、こんな思い出になってしまったのは自分を良く見せようと思ってたから。


そして「何かに秀でて無ければ居場所なんて無い」と思ってたから。


もし最初の時点でカッコつけずに「ほとんど初心者でベースも通販なんすよー」とか言えたら気は楽だったろうし、自分自身に課すハードルも低かったと思う。



世の中にはたくさんのクラブ活動やサークルがあるけど、「スキルの無い人間こそ大切に扱え」とか、そんな虫のいい事は言わない。

けれども。


ど初心者としては時々は気にかけて欲しかったというのが未だにある。


金が無くて道具を揃えられないけど、居場所が見つかった安心感から急激に伸びるパターンもあるから。


一方で、上達なんてさておきとにかく友達が欲しい人だっているし、自分の中に何かしらの「非日常」を取り入れてみたいっていう気持ちの初心者もいる。


テニスサークルで実感したけど、スキルの高い先輩よりも、気にかけてくれる先輩の方が憧れるし慕いたくなるんです。


で、気にかけてくれる先輩がいると、その先輩に褒められたくて頑張れる。


付け加えると、「技術があるかどうか」じゃなく「その技術や空間を使って何が出来るか」を教えてくれる先輩や、初心者でも入っていきやすい間口を作れる先輩の方がカッコいいと思うんです。

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