上京してほどなく、自分よりも上手いベーシストなんて星の数ほどいるんだという事を痛感しました。
数年後にバンドコンテストの東京大会でグランプリを頂き、その先の全国大会でも審査員の方から「今日のベストベーシストはあなたよ」と言って頂いたのだけど、じゃあその数年で爆裂に上手くなったかというと、実はそうじゃない。
ある方法論を仮説立てて実践した結果、それが幸運にも上手くはまった感じです。
その方法論とは、「隙間を狙うこと」。
具体的に言うと「主メロの無い場所を見つけて、難易度の低い高音域フレーズで目立つ」。
最近サッカーの世界で「優位性」という概念が言語化されたのだけど、この方法論を使えばわかりやすく説明できるので引用します。
優位性、つまりアドバンテージには三種類あります。
①質的アドバンテージ
②量的アドバンテージ
③位置的アドバンテージ
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①質的アドバンテージ
メッシと小学生ならメッシが有利。
例えば亀田興毅と鈴木福君がタイマン張ったら亀田興毅が有利みたいなことです。
演奏でいうと僕より上手いベーシストはたくさんいるので、ここでは勝負できない。
②量的アドバンテージ
極論10人で囲めばメッシからでもボールは奪える。
バンドでも、編成人数が多ければそのぶん多彩な表現が可能になるし、特にサビではサウンドに厚みを持たせやすくなる。
当時はスリーピース編成(上モノ楽器はギター1本)だったので、とりわけ音圧で不利。
③位置的アドバンテージ
人が密集した地帯でサッカーボールを奪取したりキープするのは難しいけど、誰もいないスペースに位置取りできればフリーでボールを受けられる。
周りに人がいない場所だから、パスなりシュートなり自由に振る舞える。
亀田興毅だろうが10人のヤンキーだろうが、死角に位置取りできれば落ち着いてライフルを構えられるみたいなことで、僕が狙ったのはここです。
バンドにおいて歌物である以上、楽曲は主に①主メロ②副メロ③伴奏の三種類に分かれます。
この内②副メロに焦点を置いた。
そしてその副メロを「ボーカルの隙間」に入れる。
ボーカル、つまり主メロ。
楽曲制作中は、この「主メロは一旦どこで区切られるか」というスペースをいち早く探した。
後になって「フリースペース」を見つけても、ギターやドラムに「先を越されたら」位置的アドバンテージが得られないからです。
一番乗りで「フリースペース」を見つけたら、「自分の実力の中でゆとりを持って披露できる技術」の範囲の中で「簡単な装飾フレーズ」を弾く。
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同時に、位置取りに大切なのはリズム感と「音符の視覚化」なんだとも気づきました。
いくらサッカーにおいてフリースペースでボールを受けても、トラップが下手だと「目立てるチャンス」を失うみたいな事で。
まずフリースペースかどこにあるのか、そしてどのくらいの大きさなのかは拍数を脳内で視覚化できたほうがいい。
そしてフリースペースをいち早く見つけて美味しいフレーズをさし込もうとしても、正確なリズムで弾かないと「ただの演奏ミス」になる。
ここから本格的に基礎練を始めたんですが、基礎練をどうやっていったかは別の話。
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