「天使にラブソングを」という映画をご存知でしょうか。
殺人現場を目撃してしまった無名のクラブ歌手が、匿われた先の修道院で聖歌隊を育てる事になるコメディーです。
その聖歌隊、控えめに言って下手くそ。
リズムはバラバラ、音程も取れてない。
一人一人が好き勝手にやってる。
そのうちの一人がシスター・メアリーパトリック。
大柄で陽気。いつも張り上げて歌い、その声はとにかく高い。
よく言うと、目立つ。悪く言うと、邪魔。
聖歌隊の指揮をとる事になったクラブ歌手・デロリスは、パトリックに対してこう伝える。
「あなたの大きくて高い歌声は素敵だけど、そればかりだと神様もびっくりしちゃうから1オクターブ下げて歌ってみない?」
〜
デロリスがリーダーとなって初めてのミサ。
パトリックは1オクターブ下げて歌う事で周りとの声量バランスが調和する。
しかし、デロリスの「策」はこれだけではなかった。
それは歌の最後、フェイクの部分。
フェイクとは「音楽的脈略が破綻しない程度に歌や演奏を崩すこと」。
ライブの最後、「また会いましょう!」ってな時にギターがギュイーンってしたりドラムはドコドコしてたり。
ボーカルだと「オーイェー」とか「ウォー」とかがわかりやすいかな。
そのフェイクの時、パトリックは「1オクターブ上」で歌った。
最初はただ邪魔だったソプラノが、音楽的脈略が破綻しないフェイクタイムで炸裂。
〜
ここから余談。
音楽は「調和」。
でもデロリスはきっと、パトリックのソプラノ気質、声を張り上げる事なのか高い声をだす事なのかわからないけれど、それもちゃんと肯定してあげたかったんだと思う。
そんなデロリスの心意気と、「調和と自分らしさ」のバランスを取る事ができたパトリック。
音と音の調和だけでなく、そういう「人と人の調和」。
このシーン、泣けますよ。
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