「おばけが見えた」と、息子が言った。
その真意を探った結果、彼にはおばけの定義が3つある可能性に行き着く。
①今まで見たことが無かったもの
②見たことはあるけど具体的に知らないもの
③本当におばけ
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①今まで見たことが無かったこと
例えば生まれて初めてヤモリを見た時、それをヤモリと知らずに「見知らぬ何か」だと認識しておばけと呼んでいる可能性がある。
②見たことはあるけど具体的に知らないもの
大人の世界でもよくある事だが、一風変わったように見える様を「変だ」とか、効率性が見えない生態を「残念な生き物」とか、勝手な判断で呼ぶことがある。
その多くは、無知から来る。
それでいうと最近話題となったのが、祝砲。
「発砲は威嚇行為だからやめろ」と。
祝砲は、音だけが鳴る。
つまり「この銃器に実弾は入っていません」「あなたを攻撃するつもりはありません」というメッセージであり、友好の証。
むしろ祝砲が鳴らない場合は実弾が入っているとみなされ、戦闘準備に入られかねない。
①にしても②にしても、もしかしたら息子は「あれなーに?」「これ変なのー」と聞く代わりに「おばけがいる」と言っているのかも知れない。
そして③。
もしかしたら、息子は本当におばけが見えているのかも知れない。
そのおばけは、悪いことをすると怒りに来るナマハゲかも知れないし、あるいは息子をいつも穏やかに見守っているウルトラマンかも知れない。
それはそれでいい。
「悪いことをすれば悪いことが返ってくる」
「良いことをすれば良いことが返ってくる」
そんな教訓や道徳を育むための、「おばけ」は守り神なのかも知れない。
〜
ずいぶん昔、「そのベースラインおかしくない?」と言われた事がある。
ルート音プラス5thの高音ダブルストップ。
「せめて歌いにくいって言って欲しいな」
そう思った記憶がある。
その人にとってダブルストップは「おばけ」だったのかも知れない。
なぜなら、暫く後に違う曲で同じ高音ダブルストップをした時は即採用されたからだ。
またある現場では、ライブ中に突然ブレスレットが切れた。
何故か、そこからお客さんの反応が良くなった。
「そういう事もあるかもしれないよな」
知り得ない事や再現性を見いだせないもの、あるいは自力ではどうしようもない事がある。
「おばけかもね」
「どうせなら、素敵なおばけと友達でいたいよな」
そんな事を思いながら、息子の「おばけが見えた」を聞いている。
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